リンパマッサージの基本
皮膚のみに加わるような軽いタッチ
【浅リンパ】
皮膚の真皮・皮下組織にリンパが存在し、筋肉そのものにはリンパが存在しないため、皮膚組織のみに加わるような刺激で循環を促進することが出来る。つまり皮膚を対象としたマッサージである。
【深リンパ】
内臓のリンパは、内臓に間接的に刺激が伝わるように指先や手の付け根を利用してお腹を押す。
2)手順
鎖骨部から始まり鎖骨の近くから遠くに向かって行う
※リンパの通り道を作りながら行う
【浅リンパ】
リンパ液は、鎖骨下静脈に全て集まってきますので、この鎖骨部から行いリンパ液を血管の中にスムーズに入りやすい環境を作ることが重要です。さらに、リンパ液が滞る事がないように鎖骨部の近くから行い、徐々に遠くのリンパ節部位ごとに、リンパ液の通り道を作りながら行うと途中で滞らないで行う事ができるし重要である。
【深リンパ】
鎖骨部から行い、次に胸管を刺激するようにみぞおちを呼吸に合わせて軽く押して刺激し、左右の肋骨部を胸管方向に刺激した後、腹部全体を腸の蠕動運動を促すように下腹部まで刺激する。
3)方向
流れに沿った一番近くのリンパ節に向かって行う
リンパ液は、リンパ節に向かって循環しますので、リンパマッサージの方向は流れに沿った一番近くのリンパ節に向かって行います。(リンパ管の分布に沿って行う。)
4)リズム
リンパの流れに沿った速さでゆっくり行うほうが効果的
リンパ液の流れは、血液のように早く流れませんのでゆっくり行うことが重要です。皮膚を撫でリンパ液が流れていき、そこに末端からのリンパ液や周りの細胞からリンパ管に流入してきます。リンパ管にリンパ液が充満してから刺激を行うとより効率的にリンパ液の流れを促進できます。したがって、早く行うよりむしろゆっくり行った方が効率的です。
※リンパマッサージの効果を引き出すポイントは、皮膚に対しての圧で決まる。良い圧のかけ方は、皮膚組織のみに加わるような圧でかつ心地よい刺激である。逆に悪い圧のかけ方は、皮膚が寄れたり赤みをおびたり、痛みを起こす時は不適格を意味します。
禁忌症状
リンパマッサージ施術において、基本理論と基本実技は、必要最低限習得する必要があります。
禁忌症状は【最初に理解】しなければ、施術を受ける方の健康を害する可能性もありますので、絶対に必要な知識です。
1.絶対的禁忌症状
全ての悪性疾患と全ての急性炎症の場合はリンパマッサージを行ってはいけません。これらは、細胞の減退や微生物がリンパ系によって運搬され、これらの病原体(細菌、ウィルス)が攻撃・分解されるべきリンパ節から押し出され、最終的にこれらの病原体は血液中に入り込み、全身に広がってしまうからです。
①心臓疾患
血液循環は、身体活動によって早くなったり遅くなったりしています。しかし、リンパは筋肉運動や呼吸などによって循環しますので、いわば不定期循環です。血液循環が決まっているにもかかわらず、リンパマッサージを行う事によってリンパ液の循環を促進させると、結果的にリンパ液は鎖骨下静脈に流入しますので、心臓に戻ってくる血液が増えることになり、心臓に負担がかかるため、心臓疾患の方には行ってはいけません。同様に、心臓を患ってペースメーカーを入れている方にも行ってはいけません。特に、心臓の右側の機能不全から起こる心臓浮腫は絶対禁忌症状です。
②感染症
外部からの微生物感染症(細菌、ウイルスなど)の場合は、免疫機能によって白血球が微生物を体内で、またリンパ節で攻撃して身体への害にならないように戦っています。そこにリンパマッサージを行うと、微生物を循環させ感染が広がる可能性があるため行ってはいけません。
〔補 足〕
微熱(37℃~38℃)で風邪と似たような症状の時は、日和見感染といって体内の悪い菌に負けた状態で、特に腸内細菌の悪玉菌が増えた状態の時に発症します。このような時は、腸機能が整ってこないと風邪症状が消えません。免疫機能が低下していますので、深リンパ循環促進で早く身体が改善します。
③悪性疾患
悪性腫瘍や微生物感染による炎症の場合は、感染が他に転移し感染源の広がる可能性があるので行ってはいけません。特に癌罹患者には、絶対行ってはいけません。
※明らかな疾患者は、お医者さんが対応する人ですので、こういう人に対してはリンパマッサージを行ってはいけません。
2.相対的禁忌症状
①低血圧
最高血圧が80㎜Hg~70㎜Hgと低くかつ最低血圧との差が30~20㎜Hgと低い人に行うと、もともと心臓から送りだされる力が弱いところに血液流入が増加し、さらに血液を送り出す力が弱くなり血圧が下がる可能性があるため。
※対処法は、まず小さい部分から始めて、血圧が正常な数値に落ち着いてから徐々に施術部位を広げて行う。
②喘息の発作時
喘息の発作は、迷走神経によって引き起こります。リンパマッサージは迷走神経を刺激する作用があるので、喘息の方には発作の起きていない時に行います。リンパマッサージを行うとすれば、発作の起こっていない時にはじめ、時間は短めに行い1日に2回に分けて行うのがいいでしょう。
③腎臓に問題のある方
リンパマッサージを長時間行うと、心臓に戻ってくる血液が増加し腎臓の血液ろ過量が増えて腎臓に負担がかかる。
③妊娠初期
安定期に入るのはおよそ5ヶ月、妊娠初期はまだ母体と胎児が一体化していないため異物的存在です。したがって、この時期に行うと免疫力が高まり異物を追い出そうという作用が働き、長時間の施術を行うと、流産の可能性があるため施術をしてはいけません。
※この時期は、免疫力の高まる各種療法などは全て行っていけません。
④金属の入っている人
事故やケガで骨折し、骨を固定するために金属の入っている人に対して、その部位に対してのリンパマッサージを行ってはいけません。やはり免疫力が高まり、その金属を追い出そうという作用が働き、痛みが起こる場があります。心臓にペースメーカーを埋めている人も同様です。
【教材】リンパネオティツク協会テキストより